だいじょうぶですか・・!

 もぅずいぶん前の話です。5,6年ほどなるでしょうか?ある不動産屋さんの紹介で、2階立てアパート
の鉄骨を塗装に行った時の出来事です。そのアパートは、建ってからけっこう年数を経過した古いアパ
ートでした。だから、鉄骨といっても、もちろん痛みも激しく、十分なサビ落としと、サビ止め塗料を塗る
必要がありました。
 
 サビ落としもサビ止め塗料にも手間が掛かってしまいながらも、順調に作業は進んでいたのですが、
あの事件?は、突然やってきたのです・・・・・・

 鉄骨階段に上塗りのペンキを塗っている時、2階の部屋より降りてくる住人さんがいました。
私達は、作業を中断して、住人さんが無事に降りられるのを待っていたのですが、次の瞬間、仰向けに
なって、階段を滑りながら下まで落ちていく住人さんの姿がありました。「何とドジなっ!」と、言う訳にいかず
笑いを殺しながら・・「だいじょうぶですか!」と声を掛けたのですが、階段下で、背広をはたきながら
「だいじょうぶ」と言う住人さんを見て、私の体は硬直。血の気が引くのを覚えました。

 心やさしそうな住人さんの背広をはたくお手々には、小指ちゃんが・・・なかった・・・のです。
それも、両方。ありゃ労災で失った指じゃないようで・・・・まさしく、特殊サービス業のお方です。
部屋へ戻り、しばらくしてふたたび表れた、住人さんに、再度「大丈夫ですか?」と声をかけると・・
「だいじょうぶ、だいじょうぶ!!」とのお声。そして、定番?のベンツに乗って御出勤されたのでした。
ベンツが置いてあるとは、知らなかった・・・・

 その後の仕事がさばける事!!休みもそこそこに、塗り上げて、早々に帰ろうと、下に住んでいらした
年配のおっちゃんに、「お世話になりました。無事に終わりました」と頭を下げて、何気なくおっちゃんの指
を見たら・・・やっぱりなかった・・・・両手の小指ちゃん・・・。あのアパートは、いったいどんなアパート
だったんでしょうか・・・・えっ?行って確認しろ??もぅ場所も忘れてしまいました・・。

 でも、工賃は、ちゃんと貰えたので、良い仕事だったのでしょう・・・・しかし、最後の追い上げは凄かった!

                              おしまい 

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